Goshiki no ito
嘉永五年(1852) 作曲:二代目 杵屋勝三郎
” むかひあうたる蝶さへも
─ 女夫女夫のささめごと ”
歌詞
結びあふ 五色の糸の美しく
偽紫にたとへにし みやびの群れの打ち解けて 四季の風情も色々に
筒井筒より思ひそめ 幾世か君と深見草 浅きにあらぬ盃の 底に情をこめぬらん
ささの浪風 和田津海の そよ吹く風もかくこそと
桂男と謡はれて 闇こそよけれ雲のひま
願ひの糸やアア 梶の葉の 稀に逢ふ夜は星合の
二人が中居露濡れて むかひあうたる蝶さへも 女夫女夫のささめごと
〈二上り〉 長かれや 秋の一と夜をナ 焦がれてみたる 声は 鈴虫わしゃ嬉しさに 東雲告ぐるきぬぎぬも 可愛と啼きし巣のからす 心のたけを打ち明かし 娘ごころの一と筋に 慕ふもゆかしなつかしき いつか逢瀬を澗間なる 緑の色の濃き薄き 誓ひも堅きかたばみや 錦照りそふ花の原 その源の水清き 詠めもよし野山風に 起き立つ千草ぞうるはしき 起き立つ千草ぞうるはしき
解説
嘉永5年(1852)2世杵屋勝三郎作曲のもので、七夕飾りの五色の短冊に恋の願いをかけるという娘心を詠んだものです。昔の七夕というのは旧暦の7月で、季節はすでに秋となっています。
昔から七夕の行事の一つとして高机の両端に竹を立て、紐を渡して五色の糸を吊るし水盆に水を張り、梶の葉を浮かべ、空の星を映し出すというなかなか念の入ったやり方で願い事、例えば恋の成就であるとかお裁縫の上達などを願ったものだそうです。
「偽紫」とは二世の紫、つまり来世をも誓った私とあなたの深い縁のことであり、「梶の葉」というのは、この葉に詩歌を書く風習があり、この場合はラブレターのことを指します。
「向かい合うたる蝶さえも~」というのは屏風に描かれた蝶さえもがという意味です。
大変きれいな、すがすがしい感じの曲といえましょう。
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